皺と公園
就活ってやること多いのね。意外だ!って驚いてるわけじゃなくて、もちろん知ってはいたけど今改めて、やること多いのね、ってシミジミと感じてるわけです。
ひとつの企業に本気で臨もうと思えば、その企業が属する業界研究、そしてその企業自体のリサーチはもちろん、自分が何故その企業を志望するのか、どんな仕事をやりたいのか (特別な動機、情熱があるのならそれを) 理路整然と説明する、そして納得させる必要があるわけです。面接官に、「お、こいつと働きたいな」 と思わせる必要がある。すると何かしらのオーラを出していかなければいかんわけだ。面接官のビジネス的嗅覚に引っ掛かる必要、とでもいいますか。
お、こいつは論理的だぞ
とか
お、こいつは即戦力になりそうだ
とか
お、こいつは靴下短いけどすでにビジネス感覚を持っているな
とか
お、口にご飯粒がついてるけど肝が据わってて、すでに一流の営業マン並だな
とか
お、こいつは髪の色が七色だけど、社内においても七色に光ってくれそうだ
とかね。
面接官がさらに上のレベルの面接官に 「こいつおもろいでっせ、会ってみなはれ」 と推したくなるような個性なり能力なりが要るっつーわけです。
さて僕はどうしよう。ってね、それがスムーズに分かれば苦労はない。あは。あは。
そんなわけで眉間に 「thinking 皺*」 を寄せながら散歩へと出かけたのね。
*「thinking 皺」: 深い思考状態時に、眉間などに存在する潜在的エネルギーの通り道に現れる溝的な構造を持つ皮膚のツッパリ
道中、公園の前を通りかかったら、小学生の甲高いこんな叫び声。
「130点!!」
お、何のゲームですか。と興味を持った僕は公園に入る。砂場の近くに6人の幼稚園児風の子供たちがいる。周りにはお母様方。何のゲームだろうと目を凝らしているとまた叫び声。
「120点!!」
叫び声は、興奮の証。みんな楽しそうだな。それにしても何のゲームですか。点数は下がっている。大丈夫なのか。そこにまた声。
「115点!!」
あ、また下がった。と思ったら、別の子供がひと際大きな声を張り上げた。
「新記録に近づいてってる!」
何!?これは点数が下がるほど良いゲームなのか。そして115点が新記録に限りなく近いのか。そんな疑問を持った次の瞬間、ゲームがダイナミックに動いた!
「1億点!!」
今までと桁が違うけど、計算ミスじゃないの?!と驚く僕。ハラハラしちゃうね、なんだか。さっきは新記録に近づいていたのに、さぞかし残念だろう、無念だろうと同情していたらさらなる展開が (またしても叫び声によって) 知らされた。
「1億115点!」
さっきの115点が戻ってきた。
一体なんなんだ。お母様方が彼らの周りにいましたもので、近づいて話しかけることをしなかったけれどもね、今頃になって後悔。あれはどういった趣旨のゲームだったのか。一体誰が作ったのさ。僕も混ぜて欲しい。
そんなことを考えているうち、さっきまでの眉間の皺がすっかり消えている、そんな気がした。
昼下がりの公園は、今も昔も僕の味方らしいです。
なんつてね。