独りフロリダ卒業旅行②: backpackerism | 自主見学

独りフロリダ卒業旅行②: backpackerism

独りフロリダ卒業旅行① からの続き。


これぞバックパッカーですってな気軽さで旅をはじめたわけだけど、ほら、2つもスーツケースを引きずってるし、ギターは背負ってるし、全く小回りが利かないしで、純粋なバックパッカーからは程遠い。


持ち物は、①縦60センチほどのバックパック (中身:コンピュータなど)、②大きめのスーツケース (スーツ、服、楽器、ガラクタ)、③小さめのスーツケース (楽器と服)、④ソフトカバーに入ったアコースティック・ギター。


こんなん絶対にバックパッカーと呼ばないのであって、バックパッカーism (backpackerism) を胸に秘めた、ただの阿呆面した無計画な旅行者であるわけ。 旅に慣れたとはいえあまりにも適当。


宿は決めてない

行くところは決めてない

観光も別にするつもりじゃない

案内してくれる友達がいるわけじゃない

ただ海の近くに行きたかっただけ


おい、自分よ、目を覚ませ!という程の適当さ。無計画さ。キー・ウェスト (アメリカ大陸最南端の地) に行こうかな、くらいしか計画的なものはない阿呆。 唯一決めていた 「車を借りる」 ということに関してもレンタル会社の比較及び車の予約は全く していないわけ。これはもう無計画というか夢軽客 (夢見心地で短慮軽率な旅行者の意) である。訳の分からない造語を作っていないで、さっさと話を前に進めなさいよ。はい。


運転手に 「どちらへ?」 と訊かれて 「へ?」 ってなったところから、続き。


とりあえず、シャトルバスの運転手には 「サウスビーチの真ん中くらいで降ります」 と告げた。運転手もはじめてのことらしく 「ホテルは?目的地の住所は?」 と執拗に訊いてくるものの、「いや、何も決めてないからさ、街の真ん中あたりで降りたいわけね」 と、適当にも「程」があると思うのだけど、ここは一旦その「程」というやつを忘れて、堂々言い切った。よし。


***ちなみに「サウスビーチ」とは街名、だよね。「サウスビーチ」というビーチはあるけど、そのビーチの周辺を「サウスビーチ」っていう街名にしてるんだね。ですよね?違ってたら思いっきり横っ面を張ってください。


いきなりだけど、無計画に不慣れな場所を移動していると 「旅をしてるな」 という気がするのね。1時間後に自分がどこにいるのか予想できない旅。ね。運命や縁やタイミングというやつに任せてみると、旅はとても楽しい。とても自由。失敗したな、とか、計画通りに行かなかったな、とイライラすることがまず少ない。


はじめから計画しなければ、ちょっとくらい物事がスムーズに進まなくてもイライラしないと思いますね。だって、イライラする背景には「目的が達成されない・計画通りに進まない」という「土台が崩れる」感覚があるわけですよね。その土台がそもそも存在しなければどうでしょう。一瞬一瞬、縁やタイミングを積み重ねてオリジナルの旅をつくるのみ。そんな旅が僕は好き。




サウスビーチについて、宿を探そうと思ったけど、あまりにも荷物が多いもんで20メートル歩いただけで、フラフラする。スモールライトを2万円くらいで買いたいけど、生憎フロリダでは売ってないらしい。東京、秋葉原なら売っているのに。売ってるよね。ん?もうちょい先か。


ダルくなった僕は一番近くのホテルへ。フロントにいた綺麗なラテン系の女性、1泊69ドルだとぬかす。外でも寝れるこの気候、70ドルも出してベッドを確保するなんて馬鹿らしい。しかしここは異国の地、アメリカ合衆国。パスポートなど大事な所持品もある。月曜日 (5月9日) から土曜日 (5月14日) の朝までと旅の時間も限られている。ここはひとつ、時間を有効に使いたい。そんなわけで、宿、即決。


それにしても7千円もする宿なんて、、。 ビーチ沿いでこの値段は悪くないんだけどさ、でもね、んー、なんだか高いよ。数年前、寝袋持って日本国内を旅した日々を思うと贅沢に思えてならない。国道の横とかに寝て朝方にトラックの運転手に起こされたり、お寺の境内に寝て早朝の参拝者に起こされたり、ずいぶんと邪魔の多い寝床だったけど、あれはあれでとても楽しく、とても自由で、まさに僕好みの旅。


部屋に荷物を置いて、ボンゴだけ持ってビーチへと歩く。ビーチまでは2分。いい環境だね。途中でギターを弾いている男があった。一緒にちょっと演奏しようと試みるも、彼にはリズムの概念がないらしく全く演奏にならない。それならそれで良い、フリージャズと見なして演(や)ろうじゃないかと思ったものの、これ全くジャズに非ず。奇怪な音楽。


そして気づいたね。ぷ~んと辺りを取り巻くマリファナのニオイに。ピースだね、なんて言ってられないのであって、付き合ってられんよ、面倒なことに巻き込まれるのは御免ですよと。僕はそっと彼から離れて、またビーチへと歩き出した。


ビーチ!これだよこれ。まさにこれを見たかったの。目の前に広がる海というもの。畏敬の念。ははぁぁぁ。と平伏したい。そんな心境。お久しぶりでございます、海様。そんな心境。


その後、何気なく話しかけたアジア系の男性。日本人であった。それが医療関係の学会に出席中の研究者さんであり、話が弾んだ僕らは海沿いのレストランに着席。乾杯。そんで、シーフードなどを食す。いやぁ、美味いよ。ビールと海老。まいった。これにはまいった。ビールと貝。まいった。これにもまいった。ビールとカニ。まいっ(以下省略)


海風に頬をなでられ頭をイイ子イイ子されながらの食事&ビール会。ビールはSAMUEL ADAMS。いつから飲むようになったんだろう。結構好き。「アメリカのビールは薄くてあかんよ」 なんて不評を吹っ飛ばす濃厚なビールである。他にもアメリカには沢山美味しいビールがあるみたい。僕はビールよりもウィスキーなどを好む者であるから、良くは知らないけどね。ま、ウィスキーも良く知らないけどさ。


なんだかんだで二人合わせて1万円以上の食事になっちゃった。その研究者さんは卒業直後の学生に金を出させるわけにいかんよな、と考えたらしく、結局僕は財布から何も出す必要がなく、喉の奥から大きな声で 「ごちそうさまでした」 を出すだけで済んだ。いやぁ、僕も将来学生などに奢ってあげねばね。そうやって世界は平和にまわるのですな。それにしてもシーフードってやつは、美味い。


宿に戻り、ほろ酔い気分でこれからの旅について考えを巡らせる。そして、次の日(火曜日=5月10日)から車をレンタルすることに決めた。唯一の目的地、キー・ウェスト(米国本土最南端の地)に早々行ってしまおうと、そういう曖昧な考え。これとて確定じゃぁ、ないのよ。


独りフロリダ卒業旅行③ へ続く。