独りフロリダ卒業旅行①: arrival | 自主見学

独りフロリダ卒業旅行①: arrival

疲れた体と軽快な心が同居するという状態は極めて珍しいのであって、僕も例外なく疲れた体には気だるい心を宿す人間なわけで、今回ばかりは特に自分の跳ねるような回復力に関心したり、満足したり。


期末テスト、卒業式、卒業式後のレスリング (参照:卒業式の前後ストーリー④ ) などで疲れ切った体は機上ですっかり回復したので、混じり気なし純度100%のワクワクを胸に、独りフロリダ卒業旅行をスタートすることができた。


フロリダの空気最高。そんな第一印象でフロリダ旅行のはじまりはじまり。


多くの人が空港からは乗り合いシャトルバスによって街中へと向かってる様子が見て取れる。と、ここで問題発生。問題というか、重要な質問が、こう、己の中から湧き出たわけね。


僕はどこへ行くの?


この質問には困った。だってどこへ行くのか決めてないから。無計画旅行に早くも「待った」がかかった。この状況はつまり、僕が行き先を決めるまでは、乗るべきシャトルバスさえ決まらないってことだね。つまりは僕次第では夜まで、いや、何日でも空港に留まることになるのじゃないか。それだけは避けねばいかんよ。


無計画で出発したのは自分なわけだから、大胆に旅の工程を作り上げる作業が自分に課せられている。あはは。そこで(ほとんどフロリダの地名を知らない)僕はシャトルバスの行き来を取り仕切っておる黒人の小父さんに「私はサウスビーチに行くのだよ」と堂々と告げ、乗るべきシャトルバスが決まったわけ。


そいでさ、10分後くらいにシャトルバスが僕の目の前に停まって、ラテン系の運転手が登場。英語よりスペイン語が上手そうな小父さんである。僕の荷物を軽々と持ち上げ、シャトルバス(バンくらいの大きさの車)の後ろに積む。そいで僕のギターもひょいっと持ち上げて投げるように入れたもんで、僕はカチンときた。滅多にカチンとこないけど、カチン。ちょっと語調が強まる。


あのさー、それって僕の娘みたいなもんなんですけど、楽器の扱いかた、知らないの?自分の娘をそんな風に投げられたら、どう思います? 
(Hey, that guitar is just like my daughter, you know. Haven't you handled musical instruments before? And how do you think you'd feel if I threw your daughter like you just did?)


なんてことをしっかり目を見据えて言いますと、運転手の小父さんは申し訳ないという顔になり、シャトルバスを取り仕切る黒人の小父さんも 「車に持ち込んで自分で抱えていてくださいな、わてら、壊れても補償できないですから」 なんてことを言う。そりゃそうだ。自分の娘を他人に託そうとした僕が悪かった。サッと持ち上げられたときにサッと取り返すべきだった。すまん、娘よ。


そんなわけで車に乗り込む。そこでまた問題発生。運転手が僕に訊くわけね。


「どちらへ?」
と。


僕は「へ?」ってなったね。うん。「へ?」ってなった。何故って、目的地を決めてなかったからですな。「サウスビーチへ行く」 とは告げていたものの、それは地名を知っていたからであって、別段そこに何があるわけではない。困った。


独りフロリダ卒業旅行②